今泉今右衛門の有田焼の買取
十三代今泉今右衛門は1926年に有田に生まれます。
1989年に「色絵磁器」の人間国宝に認定されました。
今右衛門家は肥前鍋島藩の旧御用赤絵屋です。
1949年に東京美術学校の工芸科図案部を卒業します。
今右衛門は初期伊万里焼のざっくりとした土味を追求し、伝統的な色鍋島を凌駕しようと模索します。
裂(きれ)を大量に収集し、更紗文・有職文の図柄を研究いたします。
また杯土(はいど)と呼ばれる鉄・マンガンを含有する土を使用します。
新たに「吹墨」(ふきずみ)という手法にこだわります。
従来の色鍋島は、白地に赤・黄・緑の色彩で染め付ける作品が多くありました。
吹墨の手法では、藍色の呉須(ごす)を霧吹きで器面に吹き付け白地をあまり見せません。
独特の今右衛門の世界がここに完成します。
次に「吹墨」は「薄墨」(うすずみ)へと昇華してゆきます。
薄墨は吹き付ける呉須を墨に代替することで、地色が淡い灰鼠色になります。
こうした今右衛門の変化については、20世紀初頭にヨーロッパで勃興したキュビスムの影響が大きいと思われます。
ピカソ・ブラックなどが旗振り役として広まったキュビスムは、古典的な一点透視図法を逸脱し、複数視点による画面の構築を行う大変新鮮な美術の潮流でした。
さらに今右衛門は「吹重ね」(ふきがさね)という手法を研究します。
これは吹墨と薄墨を吹分けて、さらに深淵な味わいを表現します。
薄墨を後から吹き付け、全体にトーンを落とす手法もよく用いられております。