志野焼 鈴木藏の買取
鈴木藏は1934年に岐阜県土岐市に生まれました。
1994年に人間国宝に認定されております。
鈴木藏は焼成中の焔の操作に秀でており、多種多様な顔の志野焼を焼き上げております。
継ぎ色紙風のモダンテイスト、釉薬下の鬼板(おにいた)による熟成された表情、厚みある白釉に箆削りによるスタイリッシュな造形。
焼成中の還元炎(酸素の供給不足による不完全燃焼)と酸化炎(酸素を充分供給する完全燃焼)を巧みに操り、斬新で見果てぬ宇宙に臨むような逸品を産み出してゆきます。
鈴木藏の志野焼では、鬼瓦のようにデコボコした形状の土石である鬼板(おにいた)が重要な役割をもちます。
鬼板は砕いて細状にしたうえで、灰釉と合わせ黒色に仕上げたり、上に長石釉をかけて鼠色に仕上げたりいたします。
鬼板とは鉄絵(鉄を含む絵具で色付け)、化粧土、鉄釉(黒色・褐色に仕上がる)に用いる、銃分を含有する褐鉄鉱(かってっこう)であります。
鈴木藏の座右の銘は金剛般若経にある「応無所住而生其心」であります。
これは「まさに住する所なく、しかもそのこころを生ずべし」と読みます。
人の心というものは大変捉え難いものであります。
しかし泰然自若として常に私の中心に存するのが心というものでなく、喜怒哀楽の感情は一瞬一瞬にして湧き上がっては消えてゆき、また新しく現れるのが心というもの。
谷間の美しい小川は常に新しい水が湧き上がり流れては消えてを繰り返す営み。草間の美しい花は常に新たな花が咲き枯れてはを繰り返す営み。
万物の事象は常に生成を繰り返しているというのが、この禅語の大意であります。
長い伝統の結晶である志野焼に携わりながらも、常に新鮮な息吹を吹き込み続けようとする、彼の作陶に対する能動的な姿勢が如実に感じられます。